SFマガジン 2010年1月号 読書メモ

SF

昨年末パルコで行われた「SFマガジン50周年展」に行ってかなり刺激を受けたので、今年は「SF読書強化年間」を三大方針の一つに制定した。
(あと二つは自転車ではLSD強化と月間1000km堅持、模型では3機完成ノルマ)
というわけでSFマガジンも全部読むことにチャレンジ開始。

思い返せばSFマガジン初購入は94年の4月号(タイムマシン100周年記念特集)。
購入開始から2~3年はSFが面白くてしょうがなかったので、ほぼすべての記事を読んでいた。その後は惰性で買ってはいたものの、コラムや好きな海外作家の翻訳、興味のある特集くらいしか目を通さなくなっていた。 2000年以降は置き場がきつくなり、気に入った特集の号を買うくらいになってしまった。
読まなくなるネックの一つは長期連載だ。だんだん面倒くさくなって「完結したらまとめて読もう」と放置しているうちに長大化してきて読むのがおっくうになる。もともと海外翻訳SFから入ったSF者なので、日本人作家の連載を読むのにそれほどモチベーションが上がらない。読めばそれなりに面白いのはわかっているんだけど・・・。
そんなわけで連載がリセットされる年初号で通読復帰にチャレンジするのである。
2010年1月号(2009年11月25日発売号)をようやく読了。
さすがに50周年記念号だけあって500ページ超のボリュームにさすがに時間はかかったものの、掲載作にほぼ外れの無いレベルの高さで、十分に楽しめた。ただ名作SF再録はもう一つだった気も。

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「息吹」 テッド・チャン
語られるうちに世界の姿が表れるその筆の運びがすばらしい。ワンアイデアのよくある話かと思いきやエントロピー終末で示される虚無感が強い印象を与える。巻頭作品にしてこの号のベストか。中島敦「狼疾記」で描かれた、暗く冷え切った宇宙の未来と、人間の存在の究極的な意味の無さに対する絶望を思い出した。
「クリスタルの夜」 グレッグ・イーガン
ハミルトンの傑作のオマージュ。イーガンにしては軽めで少し食い足りない。えっそう来るのか?!という驚きがなく予想の範囲内だったので・・・。
「スカウトの名誉」 テリー・ビッスン
構成にひねりがきいた佳品。こうなるんだろうな、と予想してもぐっとくるラスト。
「風来」 ジーン・ウルフ
チャン、シモンズ以外では一番好きかも。教師がいい味出している。
「カクタス・ダンス」 シオドア・スタージョン
スタージョンはものすごいしっくりくるものと、感覚的に良く分からないものの2種類あるが、今回は後者。
「秘教の都」 ブルース・スターリング
スターリングのエンターティナー性がよく表われた一遍。雑誌のバランスを取る軽めの作品として悪くない。でもやっぱりどこか小難しい印象を受けるのは刷り込みのせい?
「ポータルズ・ノンストップ」 コニー・ウィリス
ウィリスの泣かせの技術を堪能。ギャラクシークエストといい、こういう作品にSFファンは弱い。だがそれよりも素晴らしかったのは次号のテレポート欄のウィリアムスンと交流のあった読者の投書。本編の3倍泣かされた。
《ドラコ亭夜話》 ラリイ・ニーヴン
あんまり印象になし。チャープシストラ人の文法ネタ(「外的所有格」「内的所有格」など)はSF者同士が話すときネタで使えそうだなぁと思いながら読んだ。
「フューリー」 アレステア・レナルズ
レナルズの長編はそのうすっぺらさに辟易しながら2冊目まで読んで、あまり印象が良くない作家だったが、これはなかなか。自意識を持つロボットや銀河帝国にその成立過程と魅力的なガジェットが満載。
「ウィケッドの物語」 ジョン・スコルジー
よくありそうなネタを手堅く書いた一遍。この号で自分的に一番低い評価をするならこれか。
「第六ポンプ」 パオロ・バチガルピ
読んでて嫌になってくる、すばらしく身につまされる暗い未来の話。でも割と好き。この号の中でベスト5に入れてもいい。
「炎のミューズ」 ダン・シモンズ
シモンズによる一大シェイクスピア頌。最後をロメジュリで締めるのはどうなんだ、とは思うもののさすがにシモンズ、本当に読んでいて楽しかった。演劇にまったく興味の無い自分ですらシェイクスピアの劇を見に行きたくなった。「人類はシェイクスピアがなければ全滅していた」という大前提が示された時には思わずのけぞった。
SF的な小道具や細かい設定の作りこみもSFマニアのツボを押さえていて心憎い。感動した箇所はシェイクスピアの力によるところが大きいので(リア王の生まれついての絶望についての台詞など)その分を勘案してこの号ではベスト2。

名作SF再録
「凍った旅」 フィリップ・K・ディック
ディックの短編集は全部持っていると思ったが、読んだ覚えが無かった。切れ味がいまいち。
「明日も明日もその明日も」 カート・ヴォネガット
つまらなかった。なぜこれを収録する必要があったのか?
「昔には帰れない」 R・A・ラファティ
これは傑作。今サンリオのラファティの「イースターワインに到着」という超難解な本を読んでいるが、それとは対照的に詩情溢れるいい作品。ラファティはこの幅の広さが凄い。
「いっしょに生きよう」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
出来はいいけどティプトリーにしては割と大人しめ。なんだか萩尾さんのSF少女マンガみたい。
「記憶屋ジョニイ」 ウィリアム・ギブスン
ギブスンは読んでいるときは楽しくて格好いいのだが、読み終わって感想を書こうとしてもあまり思いつかない。

座談会 「[新版]世界SF全集を編む」 大森望/中村融/山岸真
こういう企画は好き。テーマで並べる巻のアイデアは面白い。
自分としてはどうせ全集などに収録されるSFなら、すれっからしのSFファンならほぼ読んだことのあるものばかりだろうから、解説や評論のおまけを多くして付加価値をつけて欲しい。新訳を売りにしてもあまり自分は心惹かれないし。

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