読んだ本を羅列するエントリー~3月後半分

SF
画像

「最初の恋、最後の儀式」 イアン・マキューアン 早川書房(図書館)
桜庭一樹さんの読書日記で興味を持って読んでみた。8編を収録した短編集。
全編倒錯した性癖のオンパレードで殺人、小児を対象にした性犯罪も頻繁に登場するが、まったく殺伐としておらず、逆に変に穏やかな心地のよさを感じてしまったりする。危険な本である。
最初の短編からして「男性局所をホルマリン漬けにしたもの」から話が始まったりするのだが、奇抜な小道具や着想で「何だこれは」と読者に思わせ、さらに心理描写のきめ細かさで話にひきつける手管がすばらしい。ただの悪趣味に陥っておらず、何というか品?雰囲気?がある。
収録作では狭いところにいると落ち着くロリコン変態引きこもりの話が最高。一人称の語りが素晴らしい。巻頭の幾何学的に特別な折りたたみ方をすることで、異次元に物をしまう話も素晴らしい。SF風奇妙な味の小説といった話。他にも女装に目覚める少年の話とかほんとに上手い。ほとんどの話で細かい場面まで思い出せるあたり、ただの変態作家ではない。こんな作家を拒否反応を示さずに評価できる英国文壇もすごいと思った。

「イースターワインに到着」 R・A・ラファティ サンリオSF文庫
ラファティ作品の極北。あまりに難解でたびたび中断し、他の本を読みながら足掛け3ヶ月かけて読了。書いてあることの半分は理解できない。再読、再三読すればもう少し理解できるような気もする。深遠な設計の元に宇宙の真理が記されている気もする一方で、思いついたことを片っ端から適当にそのまま書いているだけなんじゃないか、との疑念も拭えず。
大森望の解説が力作。彼の解説の中で最も生真面目に書いているものの一つだと思う。読んでも本文に対する理解度がさして増えるわけではないが。

画像

「スポーツグッズの科学」 小山義之 裳華房(図書館)
水着の進化の話、特に空気の渦の発生の仕方、それに対処する様々なアプローチなどの話は自転車に共通する部分が多く、実に面白かった。2002年とちょっと内容は古い。

画像

「贖罪」イアン・マキューアン 小山太一/訳 新潮社(図書館)
さすがにブッカー賞受賞作家の代表作といわれるだけのことがある傑作。重量感や丁寧な書き込みに風格すら感じるが、むしろ作品自体のコンセプトがすごい挑戦的で素晴らしい。

とはいえ序盤は文章の上手さはわかるものの、物語が動かないのに退屈してなかなか読み進められず。図書館の返却期限が切れて2回も借り直した(投げ出すと勿体無いような予感はした)くらいだが、誤った手紙を渡してしまうあたりからは面白くて止められず、一気に読み進む。冤罪事件が勃発し、大きく話が動き出したところで第一部終了。
第二部は6~7年?後が舞台。ダンケルク撤退や病院のシーンも戦記ノンフィクションの傑作さながらの面白さ。ついに三者が対決するシーンの息をつかせぬ迫力。真犯人も解明されミステリ的なカタルシスも十分とサービスにあふれたこのパートは、一抹の苦さをたたえたハッピーエンドで綺麗に話が閉じる。
そして最後に作家として大成したブライオニーの独白による短い第3章が始まるが、せいぜい短い後日談程度かと思いきや、驚きのどんでん返し。この第三部にはやられた。これまで語られてきた話が一気にひっくり返されるのである。しかも後から読み返せば、伏線はきちんとあちこちに張られているし、注意深く読めば予想できるぎりぎりの線を狙っているのが心憎い。
作家・物語というものの恣意性と、それが成し遂げることができる可能性の大きさを示した印象的な物語の終結。
ともすればただのバカミスになりそうな結末ながら感動してしまった。
その他
・めちゃくちゃ良く書けてる出版社の落選通知が素晴らしい
・「信頼できない語り手」ものって大好き
・プリーストの「双生児」などの作品を思い起こす(あれらより断然判りやすいが)

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP
CLOSE