自分は、ほぼ単独走ばかりで峠めぐりをしている。
元来小心者なので、日暮れや夜の山を走る時なんかは、まだ見ぬクマの影に怯えつつ走っている。
やみくもに怖がっていても仕方がない、もうちょっと敵のことをよく知らなければいかんと思い、ここ一月ほどはクマ関連のサイトや書籍、映画を渉猟している。何事もまずは活字でお勉強、がモットーなので。
クマは本当に面白い動物で、知れば知るほど奥が深い。
生態や習性など、生物学的な入門書から読み始めたが、神話や文化人類学的なテーマの本、洋の東西を問わずフィクションにも名作がたくさんあって、読むほどに読まなければいけない本が出てきて、きりがない。
一段落したら、ロードバイクの峠越えとクマをテーマにしぼって、エントリにまとめたいと思っている。
取りあえず、以下読んだもの備忘録
[ノンフィクション]
「山でクマに会う方法~これだけは知っておきたいクマの常識」 米田一彦 山と渓谷社

著者は日本ツキノワグマ研究所会長で、多くのクマ関係本を出しているが、中でもクマ対策入門として最適。お薦め。特に後半、巻末部分の遭遇時の対処法はわかりやすく、よくまとまっている。ただ観察記録の再録っぽい箇所は、リライトして読みやすくするべきだったと思う。
「四季・クマの住む森」 米田一彦 中央法規出版
上述書と内容が大分かぶる児童書。捕獲されたクマが射殺されるシーンが胸を打つ。
「となりのツキノワグマ」 宮崎学 新樹社

長野県在住のプロの写真家による著書で、掲載されているツキノワグマの写真のクオリティが高い。信州の今現在の増加傾向にあるクマの状況を知るには最適な本。お薦め。クマの糞の写真を見開きいっぱいに並べるなど、意欲的な内容で面白い。カメラをいじるクマの写真が最高。
「ツキノワグマ」 宮崎学 皆成社
児童向けの入門書。記述量が限られていることもあり、前掲の「となりのツキノワグマ」と内容的に重なる部分が多いので「となりの~」だけ読めばいいかな?
「クマの畑を作つくりました~素人、クマ問題に挑戦中」板垣悟 地人書館
熊の絶滅の危機を心から憂い、手探りで保護活動に取り組んでいる保護団体の方による著作。先に宮崎氏の本を読んでしまったこともあり、認識が少し甘く、古い印象を受けてしまった。
人間がエサ箱を用意してクマに給餌する手法はTV等で話題になったが、批判も大きかったようだ。保護活動といっても、いろいろな立場や考え方があるのを知るという意味で得るところはあった。
「熊 ものと人間の文化史144」 赤羽正春 法政大学出版局

民俗学的な手法でマタギへの聞き取りで、人間と熊の昔からの関わりを調査したもの。今まで聞いたこともないような、びっくりするような話の連続で、めっぽう面白かった。この本を読んで、「北越雪譜」をはじめとする各国の伝承や神話、文学における熊の扱いに興味が広がった。
[小説]
「羆嵐」 吉村昭 新潮文庫
世界熊害史上最悪ともいわれる、三毛別熊害事件を小説化したもの。吉村昭は第二次大戦の戦記小説で有名な作家。丹念な取材で堅実な作品をものしている。
細かい部分が微妙に史実と異なっていたり、心情をふくらましたりと脚色も施されている。だがそれも含めて当時の開拓者達の生活や精神を垣間見ることができ、リアリティに溢れた緊張感のある小説になっている。熊撃ちの老人のキャラクターが秀逸。ド迫力の表紙とタイトルがいい。
「ザ・テラー 極北の恐怖(上・下)」 ダン・シモンズ 嶋田洋一 ハヤカワ文庫NV
これは発売時に読んだものを再読。
北極で氷に閉じ込められた船の乗組員を、巨大な北極熊が次々と襲い、惨殺していく、実話をもとにしたスリラー。
シモンズらしく神話や超自然的な要素も取り入れられているが、熊の狡猾さ、力の凄まじさの描写が巧み。閉塞感と人数がどんどん減っていき、取れる手段が無くなっていく絶望感で、読むのをやめられない。エスキモーの生活についての詳細な描写も興味深い。エンターテインメントとして良作。
[手元にあってこれから読む予定のもの]
中沢新一「熊から王へ カイエ・ソバージュ2」
熊谷達也「相克の森」「氷結の森」
[いずれ入手したいもの]
「ベア・アタックス~クマはなぜ人を襲うか(Ⅰ・Ⅱ)」S・ヘレロ 嶋田みどり・大山卓悠 北海道大学図書刊行会
[クマ映画]
「グリズリー」 1976年 ウィリアム・ガードラー
幼少時にパッケージイラストがあまりに怖く、印象に残っていたので、期待しつつ見始めたが、いちばんよくできていたのはパッケージイラストという、パッケージ詐欺の最たる作品。
クマの襲撃シーンが、あまりにもちゃちで泣ける。「5mの超巨大グマ」と謳っておきながら、5mに見せようという努力を完全に放棄している。バズーカで吹っ飛ばして退治というアメリカンな結末はあっけにとられた。クマに対する知見を深めるという意味では何の役にも立たなかった・・・。
「クヌート」 2008年 マイケル・ジョンソン
ドイツの動物園のアイドルである、ホッキョクグマの小熊クヌートの成長を追う映画だが、野生のホッキョクグマとヒグマの生態を映した場面が多く、こちらの方がむしろ興味深かった。とべ動物園の「ピース」でホッキョクグマの小熊の愛らしさには免疫があったし。
実際に自然の中で動いている、クマのスピード感やふるまいにがどういったものかがわかる。
[クマ関連のウェブページおすすめ]
Wikipediaより「三毛別熊害事件」:福岡大ワンゲルの被害と並んで、最も悲惨な熊害事件。Wikiの記事でも指折りの充実した内容。ヒグマの事例だが、熊の恐ろしさの認識が改まる。というかこれを読んだがために熊が怖くなった。トラウマ。
「ツキノワグマ事件簿」:上の方で著書を紹介した、写真家宮崎学のページ。更新が頻繁で内容も面白く、全エントリを一気に読んでしまった。ツキノワグマの増加と人里への出没に警鐘を鳴らす。これを読むと信州の峠を走るのを躊躇するようになるかも。

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