「おじさん自転車講座」長尾藤三 五月書房
1994年初版、今回読んだのは1999年の改訂版。

長尾氏は45歳を過ぎて自転車に乗り始め、既に20年以上乗られている方。オートバイのキャリアはより長く、そちらの本も何冊も出している。自転車に関しては本書が2作目。本書以前、1989年に「バイシクル・バイブレーション」という本を出しているが、これは未読。
自転車という趣味が、もっとマイナーだった90年代に出版された本だ。
本書では車に対して自転車がいかにすばらしいか、これからの時代にマッチした乗り物であるか、ということを、繰り返し力説している。
今では似たようなことを書く人が増えたため、現在の視点で見ると目新しいメッセージには映らないかもしれない。
また自転車エッセイといっても、バイク誌の連載をまとめた性格上、自転車にからめて環境や、自然、社会、人生観について書いた内容が多い。既にかなり乗っている自転車乗りから見れば、少し物足りないかもしれない。
そういう人には、続編「おじさん自転車革命」と、08年の「快感自転車塾~速くは無くともカッコよく疲れず楽しく走る方法」を薦めたい。
より乗り方、走り方に即した実際的な内容になっており、この2冊は自分が読んできた自転車本の中でも名著の一つだと思う。
本書でも幾たびかハッとさせられた言葉があった。
「考えて走らないと、うまくも早くもならない」
ギクッ。確かにその通り。苦しい思いをして長い時間走っても、自己満足になっていて、ちっとも進歩しない感がある。
思えば大学のサークルで楽器に青春を賭けていた頃も、演奏自体の楽しさ、運動の肉体的な快楽に流されがちで、厳しく突き詰める姿勢が弱く、中途半端なレベルまでしか達しなかった。
「いいコースは自分で探して走って発見するもの」
ちなみに「名所がない、行き止まり、旧道」がいい道を見つけるコツらしい。
観光名所はクルマが多いから避ける。山懐に向かう行き止まりの道は渋滞も無く、いい空気と静かなたたずまいがあるのがいいとのこと。バイパスのできた旧道は、やはり通行量が少なく、路面もそれほど荒れていないので走りやすいらしい。ふむふむ。
よくいくコースが決まってきてしまうと、ルーチンワーク的にルートを往復するだけになってしまうから、たまには違ったルートを試す好奇心を持ち続けなければ。
「修理をするようではイカン、その前に整備をしろ」
ただしパンクは別。ディレーラー、ブレーキなど少しでも普段の状態から変化があれば、きちんと解決しておくこと。構わず乗り続けてトラブるのは愚の骨頂。自分も異音を気になりつつも、スルーして乗ったりしていた。反省。
「いい先輩、いい仲間を見つけよう」
他人の走り方を観察したり、意見を聞いたりすることで、一人で走っているよりも格段に効率的に上達できる。
時間を合わせたり、連絡したりの億劫さから、ソロの気安さに流れてしまっている。ブルベに出て、一緒になる人と話したりして、少しは補えてはいると思うが、もうちと機会を設けて他人と一緒に走らないといかんなぁ。
もう絶版だし、内容的に多少古びている部分はあるが、長尾氏の他の著作が気に入った人は、探して読んでも損は無いと思う。
自転車に対してのみならず、背伸びせず、見栄を張らない、余裕ある大人の自転車乗りの言葉の数々はなかなか得がたいものがある。

コメント