9月に読んだ本メモ

これも後からの更新。
日付の記録を忘れて何をいつ読んだかは不明。

「ドクター・ラット」 ウィリアム・コッツウィンクル 内田 昌之 河出書房新社
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 村上春樹 新潮社
「テメレア戦記2」  ナオミ・ノヴィク 那波かおり ヴィレッジ・ブックス
「テメレア戦記3」 ナオミ・ノヴィク 那波かおり 「伊藤計劃全記録」 早川書房
「ルート359」 古川日出男 講談社文庫
「サラマンダー 無限の書」  トマス・ウォートン 宇佐川 晶子 早川書房

「ドクター・ラット」
幻の名著として名のみ高かった作品の待望の邦訳。これが30年前に書かれていたとは。養鶏所のシーンとかほんとに強烈。
現在でも内容は古びてないのだが、オーウェルのようなクラシックにはなりきれない、どこかチープな感じが逆に味わい深い。
前半の、手をかえ品をかえ続けざまに繰り出されるショッキング描写、中盤以降の狂想曲めいた盛り上がり、すべてが終わった後のまったきの虚無的な静寂。ショスタコの交響曲やボレロみたいな曲が大音量で終結した後、誰も拍手しないでシーンとしているコンサート会場、みたいな読後感。

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
自称本読みとして恥ずかながら、村上春樹は今回が1冊目。皆が読んでるものを敬遠するマイナー志向が災いして、どんどん偉くなってしまい、今さら手を出すに出せなくなっていた。海外翻訳SF、とくにヴォネガットあたりの文体の影響を受けているとか、事前知識ばかり得て読んだような気になっていたが、改心し、まず代表作の一つとされるこの作品を試してみた。

比喩表現の凝り方と、すこしひねくれたアイデア、加えて全体の低体温性が印象的な作家だ。
そんなに読みやすいわけでもなく、一見淡々とした展開なのに、よくこれだけポピュラリティを得ているなぁと感心。ちょうどわかりやすいくらいの異質感がいいのかな。
しかし上手なことは確かだ。冒頭から、左右のポケットの硬貨を同時に計算する挿話の、そのちょっと不思議な感覚と、それを整理して語る手並みの鮮やかさに感心させられた。
ただ、やたらレコードや本の引用で趣味のよさをひけらかしたり、弱々しいようなポーズを取りつつも、自意識過剰なところが、読んでて少しこそばゆい感じ。
なんだかんだ独特のクセがあって、やはり興味深いところはある。世評の高いねじまきとカフカと1Q84くらいは試してみる予定。

「テメレア戦記2」
タルかった。ちょっとのんびりしすぎな気が。テメレアのけなげさを愛でるだけになりつつある。

「テメレア戦記3」 
旧来の西洋に限定された世界でのドラゴンを扱ったファンタジーと違い、グローバルな話にしようという意欲は感じるが、あまりそれが肌にあわない。奔放な想像で重厚に作り上げられた(いくぶん閉鎖的な)世界が好きというか。歴史改変ものとしては、特に中国の描写なんかが甘く感じる。4巻も最近出たみたいだが、自分はここまでかな。

「伊藤計劃全記録」
読了して、本当にもったいない人を亡くしたと改めて思う。小説以外の文章もじつに達者。とくに映画レビューのカドの立たない程度に挑発的な文章の面白さには参る。レビュアーやコラムニストとしても成功できたのでは。わりと間口は狭いかもしれないけれど、自分の得意フィールドでは超一級のものを生み出すことができる人、という印象。

「ルート359」古川日出男 講談社文庫
某有名テーマパークを舞台にした「カノン」が素晴らしい。震災時のその某有名テーマパークの話とかを聞くにつけ、完璧に構築された仮想世界が、アクシデントでほころびや隠されたその裏側があらわになる、みたいな話は大好物。さらに世界が崩壊したり、構造がゆらいだりする話なんかだと言うことなし。

「サラマンダー 無限の書」
迷宮の城、自動人形に人造の美女、書物創世記の裏面史とか、おいしいネタがたくさん。でも作者の趣味が全開すぎてやや引く…。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP
CLOSE