「肥満自転車」加藤五十六 枻出版 読了

ロードバイク

「肥満自転車」加藤五十六 枻出版 読了

画像

自分はまったく肥満とは縁が無い。それどころか逆に太れない(=筋肉がつきにくい)体質が悩みの自転車乗りだ。減量に悩む多くの自転車乗りからは「けっ自慢かよ」と石を投げつけられそうだが、こっちはこっちで毎日腹筋をしてもいっこうに割れない腹やら、腕立て伏せもむなしく「女のようだ」と言われる二の腕やらにけっこう悩んでいたりするのである。

そんな自分とは無縁そうな書名ではあるが、自転車本はすべて目を通すようにしているので、この本もさほど期待せずに手にとってみた次第だが、これは思わぬ拾い物だった。

まず挿絵を描いているのがSFイラストの大家・加藤直之氏と、無駄に豪華なのに驚く。著者の自転車仲間であるとの由。
故野田昌宏氏のSFマガジン連載を愛読していた身には懐かしい独特の絵柄で、自転車やパーツ、コミカルな人物の愛くるしい乗車姿などが描かれる(でも一見雑そうな絵柄に見えるから初見の人には好まない人もいるかも)。これだけでSFファン兼自転車乗りとしてはマストバイである。

書名から健康やダイエットをキーワードにした内容かと思いきや、意外にも本格的な自転車本である。
冒頭からいきなり、MTBで走行中の夏の下り坂でブレーキがヴェイパーロック現象を起こして止れなくなるという珍しい(というかマニアックな)トラブルの話が始まるあたりからもそれが表われている。これから自転車ダイエットを始めようと思って手に取るであろう自転車初心者は完全に置いてきぼりである。
どちらかというと数年乗っていろいろ自分なりの経験則を身につけやコツをつかんできたあたりに読んだ方が「あるある」とうなずける部分が多く、楽しめると思う。

特に自分に役立ったのは膝痛に関する内容だ。
肥満者は膝を痛めやすいらしく、対策や原因のメカニズムなどを丁寧に記述している。膝が弱くて悩んでいる自分が日ごろ疑問に思っていたり、ぼんやりと感じていたノウハウが語られており、これだけでも読む価値があった。本書では著者の医者としての知識、自転車乗りとしての経験の双方から、原因や対処法などが具体的にわかりやすく語られる。ペダリングについての説明も、メカニズムや自身の経験からの具体的な記述があり有用であった。

なお肥満者という視点からの自転車やウェア、サドルなどのパーツ選びや、ツーーリングでの注意点、給水や下り坂でのアドバイスなどもいちいち明快でそういった本来の読者にも参考になる一冊だと思う(たぶん)。

インスタントな内容の雑誌記事やムックばかりで決まりきったネタばかりの自転車出版物において、ここ最近でいちばん楽しめた一冊であり、強くおすすめしたい。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP
CLOSE