これも後からの更新。
日付の記録を忘れて何をいつ読んだかは不明。
「ドクター・ラット」 ウィリアム・コッツウィンクル 内田 昌之 河出書房新社
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 村上春樹 新潮社
「テメレア戦記2」 ナオミ・ノヴィク 那波かおり ヴィレッジ・ブックス
「テメレア戦記3」 ナオミ・ノヴィク 那波かおり 「伊藤計劃全記録」 早川書房
「ルート359」 古川日出男 講談社文庫
「サラマンダー 無限の書」 トマス・ウォートン 宇佐川 晶子 早川書房
「ドクター・ラット」
幻の名著として名のみ高かった作品の待望の邦訳。これが30年前に書かれていたとは。養鶏所のシーンとかほんとに強烈。
現在でも内容は古びてないのだが、オーウェルのようなクラシックにはなりきれない、どこかチープな感じが逆に味わい深い。
前半の、手をかえ品をかえ続けざまに繰り出されるショッキング描写、中盤以降の狂想曲めいた盛り上がり、すべてが終わった後のまったきの虚無的な静寂。ショスタコの交響曲やボレロみたいな曲が大音量で終結した後、誰も拍手しないでシーンとしているコンサート会場、みたいな読後感。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
自称本読みとして恥ずかながら、村上春樹は今回が1冊目。皆が読んでるものを敬遠するマイナー志向が災いして、どんどん偉くなってしまい、今さら手を出すに出せなくなっていた。海外翻訳SF、とくにヴォネガットあたりの文体の影響を受けているとか、事前知識ばかり得て読んだような気になっていたが、改心し、まず代表作の一つとされるこの作品を試してみた。
比喩表現の凝り方と、すこしひねくれたアイデア、加えて全体の低体温性が印象的な作家だ。
そんなに読みやすいわけでもなく、一見淡々とした展開なのに、よくこれだけポピュラリティを得ているなぁと感心。ちょうどわかりやすいくらいの異質感がいいのかな。
しかし上手なことは確かだ。冒頭から、左右のポケットの硬貨を同時に計算する挿話の、そのちょっと不思議な感覚と、それを整理して語る手並みの鮮やかさに感心させられた。
ただ、やたらレコードや本の引用で趣味のよさをひけらかしたり、弱々しいようなポーズを取りつつも、自意識過剰なところが、読んでて少しこそばゆい感じ。
なんだかんだ独特のクセがあって、やはり興味深いところはある。世評の高いねじまきとカフカと1Q84くらいは試してみる予定。
「テメレア戦記2」
タルかった。ちょっとのんびりしすぎな気が。テメレアのけなげさを愛でるだけになりつつある。
「テメレア戦記3」
旧来の西洋に限定された世界でのドラゴンを扱ったファンタジーと違い、グローバルな話にしようという意欲は感じるが、あまりそれが肌にあわない。奔放な想像で重厚に作り上げられた(いくぶん閉鎖的な)世界が好きというか。歴史改変ものとしては、特に中国の描写なんかが甘く感じる。4巻も最近出たみたいだが、自分はここまでかな。
「伊藤計劃全記録」
読了して、本当にもったいない人を亡くしたと改めて思う。小説以外の文章もじつに達者。とくに映画レビューのカドの立たない程度に挑発的な文章の面白さには参る。レビュアーやコラムニストとしても成功できたのでは。わりと間口は狭いかもしれないけれど、自分の得意フィールドでは超一級のものを生み出すことができる人、という印象。
「ルート359」古川日出男 講談社文庫
某有名テーマパークを舞台にした「カノン」が素晴らしい。震災時のその某有名テーマパークの話とかを聞くにつけ、完璧に構築された仮想世界が、アクシデントでほころびや隠されたその裏側があらわになる、みたいな話は大好物。さらに世界が崩壊したり、構造がゆらいだりする話なんかだと言うことなし。
「サラマンダー 無限の書」
迷宮の城、自動人形に人造の美女、書物創世記の裏面史とか、おいしいネタがたくさん。でも作者の趣味が全開すぎてやや引く…。

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